ドレミの歌の英語歌詞は鹿?「ドはドーナツ」ではない真相と発音の極意
「ドはドーナツのド、レはレモンのレ……」。日本の保育園や小学校、合唱教室で誰もが一度は声を弾ませて歌ったことのある国民的唱歌「ドレミの歌」。しかし、その原曲である不朽のミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』の英語歌詞に触れた瞬間、多くの日本人が「えっ、ドはドーナツじゃないの?」「鹿ってどういうこと?」と強烈な衝撃を受けることになります。
原曲の英語歌詞で歌われているのは、「Doe, a deer, a female deer(ドゥ、鹿、メスの鹿)」。なぜドーナツではなく鹿なのか、そしてなぜ「シ」は英語で「Ti(ティ)」と発音されるのでしょうか。世界中で歌い継がれ、英語学習の教材としても根強い人気を誇る「ドレミの歌」の原曲と歴史、誕生の背景にある言葉遊びの仕掛けから、ペギー葉山氏が遺した日本版訳詞の舞台裏、さらにはネイティブのように歌える発音のコツまで、メディア編集部の徹底取材と文献調査をもとに解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:英語歌詞の「ド」はドーナツではなく「Doe(牝鹿)」。英語の同音異義語(Homophone)を巧みに利用した音階教育ソングである。
- 要点2:ペギー葉山氏による日本語版は直訳を避け、「子どもの身の回りにある親しみやすい食べ物・言葉」へと大胆にローカライズされた傑作である。
- 要点3:英語圏のソルフェージュでは「シ」ではなく「Ti(ティ)」と発声。英語特有のリズムとリンキング(音の連結)を学ぶ教材としても極めて優れている。
【真相究明】「ドはドーナツ」ではない?英語歌詞『Doe a deer』に隠された言葉遊びの正体
私たちが親しんできた日本語版と、映画『サウンド・オブ・ミュージック』でジュリー・アンドリュースが歌い上げた原曲の最大の違いは、「音階の響きと同音異義語(発音が同じで意味が異なる英単語)を掛け合わせた言葉遊び」にあります。
原曲の作詞を手掛けたのは、ブロードウェイの黄金コンビとして知られる作詞家オスカー・ハマースタイン2世(作曲はリチャード・ロジャース)。彼は、音楽をまったく知らないトラップ家の子どもたちに、家庭教師マリアが音階(ソルフェージュ)の初歩を教えるシーンのためにこの歌を書き下ろしました。
そこで彼が採用した仕掛けが、「Do・Re・Mi」という記号を、子どもたちが日常で耳にする英単語の音へ重ね合わせることでした。つまり、「Doe a deer 歌詞の真相」とは、単に鹿について歌いたかったわけではなく、音階の「Do [doʊ]」と、メスの鹿を指す「Doe [doʊ]」の英語発音がまったく同じである点に着目した、極めて合理的な記憶法(ニーモニック)だったのです。
続く「Re」は太陽の一筋の光を意味する「Ray」、「Mi」は自分自身を指す「Me」、「Fa」は遠くを意味する「Far」といった具合に、すべての音階が英語の日常単語と精密にリンクしています。抽象的な音階記号を、具体的なイメージと言葉の音で一気に脳へ定着させる教育的アプローチこそが、この名曲が世界中で称賛される理由です。

【徹底比較】英語歌詞と日本語版の違い一覧|和訳・カタカナ表記・意味の構造的ギャップ
英語の原曲を理解する上で外せないのが、映画本編で歌われる導入部(プレリュード)の存在です。日本語版ではカットされがちですが、原曲では「Let's start at the very beginning, a very good place to start...(最初から始めましょう、始めるにはうってつけの場所よ)」という語りかけから曲が展開します。英語歌詞、カタカナ発音、直訳、そしてペギー葉山版の日本語詞を対比すると、その構造の鮮やかな違いが一目でわかります。
| 音階 | 英語歌詞(原詞) | カタカナ表記(歌唱用) | 直訳(本来の意味) | ペギー葉山版(日本語歌詞) |
|---|---|---|---|---|
| Do | Doe, a deer, a female deer | ドゥ ア ディーア ア フィーメイル ディーア | 牝鹿、それはメスの鹿のこと | ドはドーナツのド |
| Re | Ray, a drop of golden sun | レイ ア ドロップ オヴ ゴールデン サン | 光線、黄金に輝く太陽のしずく | レはレモンのレ |
| Mi | Me, a name I call myself | ミー ア ネイム アイ コール マイセルフ | 私、自分を呼ぶときの名まえ | ミはみんなのミ |
| Fa | Far, a long, long way to run | ファー ア ロング ロング ウェイ トゥ ラン | 遥か遠く、走っていく長い道のり | ファはファイトのファ |
| Sol | Sew, a needle pulling thread | ソウ ア ニードル プリング スレッド | 縫うこと、糸を引く針のこと | ソはあおいそら |
| La | La, a note to follow sew | ラ ア ノート トゥ フォロウ ソウ | ラ、ソの次にやってくる音符 | ラはラッパのラ |
| Ti | Tea, a drink with jam and bread | ティー ア ドリンク ウィズ ジャム アンド ブレッド | 紅茶、ジャムとパンと一緒に飲むもの | シはしあわせよ |
| Do | That will bring us back to Do | ザット ウィル ブリング アス バック トゥ ドゥ | そうすれば、また最初の「ド」に戻るのよ | さあ うたいましょう |
表を見れば明らかなように、原曲は「Doe(鹿)」「Ray(光線)」「Me(私)」「Far(遠い)」「Sew(縫う)」「Tea(お茶)」という同音異義語がすべて有機的に結びついています。対して日本語版は、頭文字を使った「言葉遊び歌(折句・アクロスティック)」として再構築されているのが特徴です。
ペギー葉山が変えた日本の常識|ブロードウェイの衝撃から『みんなのうた』誕生の経緯
なぜ日本において、英語の直訳ではなく「ドーナツ」や「レモン」になったのか。その鍵を握るのが、戦後日本を代表するジャズ・ポピュラー歌手のペギー葉山氏です。
1960年、ロサンゼルスでの公演を終えたペギー葉山氏は、ニューヨークのブロードウェイで上演されていたミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』(主演:メアリー・マーティン)を観劇しました。客席で舞台を観た彼女は、劇場全体が幸福な一体感に包まれる光景に激しい感銘を受け、「この素晴らしい歌を絶対に日本の子供たちに届けたい」と決意。現地の楽器店へ直行し、発売されたばかりの楽譜を自ら買い求めて日本へ持ち帰りました。
しかし、直訳しようとした段階で大きな壁にぶつかります。「ドは雌鹿、レは光、ソは針に糸を通すこと……」。これをそのまま日本語にしても、当時の日本の児童には情景がまったく浮かんできません。英語特有の同音異義語の面白さは、日本語に直訳した瞬間に跡形もなく消え去ってしまうからです。
ペギー葉山氏が生前のインタビューや手記で語ったところによると、銀座の喫茶店で訳詞に頭を悩ませていた際、テーブルに置かれたドーナツを見て「ドはドーナツのドにしよう!」と閃いたといいます。そこから「レはレモン」「ミはみかん……いや、語呂が悪いから『みんな』」「ファはファイト」と、子どもの身近にある明るい言葉を次々と当てはめていきました。
こうして完成した訳詞は、1962年にNHK『みんなのうた』で放送されるや否や全国的なブームを巻き起こします。原曲の「言葉遊びによるソルフェージュ教育」という本質を理解した上で、日本の言語感覚と生活様式に即して大胆に翻案したペギー葉山氏の言語的直感こそが、半世紀以上愛される名訳を生み出したのです。

【言語学・音楽教育の視点】なぜ「シ」は「ティ(Ti)」なのか?ソルフェージュの歴史と日英の受容
英語歌詞を歌う際、日本人が最も戸惑うのが「シ(Si)」ではなく「ティ(Ti)」と発音される点です。「Do Re Mi Fa So La Ti Do」という表記を見て、「ミスプリントではないか」と疑う読者も少なくありません。
この謎を解くには、中世ヨーロッパにまで遡るソルフェージュの歴史を知る必要があります。11世紀、イタリアの修道士グイード・ダレッツォが「聖ヨハネ賛歌」の各節の頭文字から「Ut-Re-Mi-Fa-Sol-La」の6音音階を考案したのがドレミの起源です。その後、16世紀末に7番目の音として「Si(聖ヨハネの頭文字 S+I)」が追加されました。
ところが19世紀のイギリスで、教育者サラ・アン・グローバーとジョン・カーウェンが提唱した「トニック・ソルファ法」によって大きな改変が行われます。この記譜法では、各音階の頭文字を1文字(D, R, M, F, S, L...)のアルファベットで略記していました。しかし、5番目の「Sol(ソ)」と7番目の「Si(シ)」は、どちらも頭文字が「S」で重複してしまいます。
そこで混同を避けるため、「Si」の子音を「T」に変えて「Ti(ティ)」としたのです。このトニック・ソルファ法が英米圏で音楽教育の標準として定着したため、ミュージカルを手掛けたリチャード・ロジャースたちも当然のように「Ti」を採用し、「Tea(紅茶)」という単語を歌詞に当てはめました。
日本は明治時代にフランスやドイツ経由で音楽理論を導入したため「ドレミファソラシ」が定着しましたが、英語圏では「Do-Re-Mi-Fa-Sol-La-Ti」が常識です。この文化的な受容ルートの違いが、「シ」と「ティ」のギャップを生み出しています。
【実践ガイド】ネイティブのように歌える!英語発音のコツと効率的な覚え方詳細まとめ
英語の「ドレミの歌」は、正しい英語発音、リズムの抑揚(ストレス)、音の連結(リンキング)をマスターする上で最高の教材です。棒読みのカタカナ発音を抜け出し、ネイティブらしい自然なグルーヴで歌いこなすための3大ポイントを整理しました。
1. 母音の脱落と連結(リンキング)を意識する
単語を一つひとつ区切るのではなく、前の単語の語尾と次の単語の頭をスムーズにつなぎます。
- Doe, a deer:「ドゥ、ア、ディーア」ではなく、[ドゥア・ディーア]と一息でつなげる。
- A drop of golden sun:「ドロップ・オブ」の [p] と [əv] が連結し、[ドロップォヴ]と発音。
- A needle pulling thread:「ニードル・プリング」の l 音と p 音を滑らかに移動。thread の [θr] は舌先を上前歯に軽く当てて息を抜く。
- A drink with jam and bread:with の語尾と jam、and の d 脱落を意識し、[ウィズ・ジャメン・ブレッド]のリズムに乗せる。
2. 英語特有の長母音と二重母音の口の形
「Do」は日本語の「ド」のように短く開くのではなく、唇を前にすぼめて「ドゥー [doʊ]」と響かせます。「Ray」は「レ」ではなく「レイ [reɪ]」、「Sew」は「ソ」ではなく「ソウ [soʊ]」と、二重母音の後半を小さく残すのが本物の響きを生むコツです。
3. ストーリー仕立てで覚えるステップ記憶法
歌詞が頭に入らない場合は、以下の3ステップで覚えるのが最も効率的です。
- ペア単語の暗記:「Do=牝鹿(Doe)」「Re=太陽光(Ray)」「Mi=私(Me)」「Fa=遠い(Far)」「Sol=裁縫(Sew)」「La=次の音(La)」「Ti=お茶(Tea)」の対応関係をまず頭に叩き込む。
- リズム朗読(チャント):メロディを付けず、歌詞をメトロノームのリズムに合わせて英語のリズム(強弱)だけで声に出す。
- コール&レスポンス練習:映画『サウンド・オブ・ミュージック』の音源に合わせ、マリア役の呼びかけに対して子どもたちのパートを歌う感覚で練習を重ねる。

【実態検証】英語学習者・親子が直面するリアルなギャップとおすすめの活用法
SNSや教育現場の声を検証すると、インターナショナルスクールや子ども英語教室に通う家庭から「子どもが英語のドレミの歌を覚えてしまい、小学校の音楽の授業で『シ』ではなく『ティ!』と歌って先生に驚かれた」「家で鹿の歌を歌っていて最初は何のことか分からなかった」といった体験談が頻繁に寄せられています。
また、大人になってから洋楽カラオケやリスニング教材として原曲に挑戦した層からは、「中学レベルの基礎単語しか使われていないのに、いざ原曲のスピードで歌おうとすると舌が回らない」「英語の音のつながりを身体で理解するのに最も役立った」という評価が目立ちます。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
▼ 英語歌詞での学習を強くおすすめできる人:
- フォニックスやリンキングを感覚的に身につけたい英語初級〜中級者:基礎英単語の同音異義語やリズムの強弱を体得するのに最適です。
- 子どもに英語の音感を楽しく学ばせたい保護者:映画の映像と一緒に親しむことで、無理なくリスニングの耳を育てることができます。
- ミュージカルや洋楽を原語の美しさで表現したい人:作詞家が意図した言葉の韻律を肌で感じることができます。
▼ 慎重なアプローチが必要なケース・注意点:
- 厳密なクラシック音楽教育(固定ド唱法)を始めたばかりの幼児:日本の音名(ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ)と英語圏の階名(Tiを含む移動ド)が頭の中で混同し、絶対音感の習得段階で混乱を生む場合があります。指導者と相談しつつ並行させるのが安全です。
- ビジネス英語や論理的スピーキングを最優先したい学習者:本楽曲はあくまで音韻と基礎語彙のトレーニング用であり、実践的な構文力を直接鍛える目的には向きません。
【ドレミ の 歌 英語】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:映画『サウンド・オブ・ミュージック』の英語歌詞は、私たちが知っている曲より長いのですか?
A1:はい、原曲は私たちがよく知る「ドレミのサビ」だけではありません。冒頭に「Let's start at the very beginning...」から始まる長めのプレリュード(前奏部・導入曲)があり、後半ではマリアと子どもたちが音を重ねてハモる複雑なアンサンブルパートが展開されます。曲全体の構成は非常に重厚で、ミュージカルとしての聴きごたえに満ちています。
Q2:楽譜やテキストによって「So」と「Sol」の表記が分かれているのはなぜですか?
A2:ソルフェージュの音階名としては歴史的に「Sol」が正式ですが、英語歌詞においてオスカー・ハマースタイン2世は「針と糸で縫う(Sew)」という単語と発音を完全に一致させるため、歌詞カード上ではあえて「So」と表記しました。英語圏のポップスや教育用楽譜では「So」と書かれるのが一般的です。
Q3:英語のドレミの歌を子どもに教える際、カタカナ発音を見せても大丈夫ですか?
A3:最初のリズムのきっかけを掴むためにはカタカナ補助も有効ですが、定着段階では早めに文字を外し、映画の歌声や公式音源の「耳からのインプット」に切り替えることを推奨します。特に「th」や「r/l」の音はカタカナでは正確に再現できないため、音真似(シャドーイング)を中心に進めると自然な発音が身につきます。
まとめ:文化の架け橋となった名曲が教える言葉と音楽の普遍的価値
「ドレミの歌」の英語歌詞がドーナツではなく「鹿(Doe)」であったという事実は、一見すると単なるトリビアに思えるかもしれません。しかしその背景を掘り下げると、オスカー・ハマースタイン2世が仕掛けた緻密な英語の言葉遊びと、それを日本の生活文化に見事になじませたペギー葉山氏の翻訳の知恵という、日英双方の卓越したクリエイティビティに出会うことができます。
原曲の英語歌詞を口ずさむことは、英語の母音の深みや音の連結を体感し、異文化の教育的工夫に触れる素晴らしい体験です。今度この名曲を耳にするときは、ぜひ「Doe, a deer, a female deer」の澄んだ響きに耳を澄ませ、半世紀を超えて世界を魅了し続ける言葉と音楽の魔法を味わってみてください。 (出典: ドレミ の 歌 英語(Yahoo!ニュース))